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古くから日本人に親しまれてきた着物文化はもう終わりなのか

コロナも明け、円安が続く中外国人観光客が増え、

インバウンド業界が盛り上がる中来日中の外国人の中に「着物を着てみたい」「日本文化に触れてみたい」と言った声をネットやメディアを通じよく伺います。

そんな中、「旅行客が多く着物も業界も盛り上がってるんじゃないの?」とう声を頂きますが、旅行で観光に来る外国人のお客様頼りだけだと着物業界は今後、確実に衰退をたどる一方で歯止めがききません。着物業界の現状はより厳しくなる一方です。

「着物って高価だから儲かるんじゃないの?」とか「着物は日本の文化だから衰退しない」とか

昨今、コロナを皮切りに物事を単純に考えてしまう事は非常に危険だという事と「日本の着物文化が衰退していく要因は何だったのか?」等、着物レンタル業を携わる傍ら簡単に考察してみました。

今回は着物が衰退していく要因となった背景を簡単にまとめてお送り致します。

➊明治石維新の到来

❷第二次世界大戦後、ポリエステルの流通

❸バブル崩壊、着物離れ

❹コロナショック

➊明治時代

明治に入るまで、国民の大半が着物を着用し親しまれてきた着物。

明治は政治的な影響により、日本政府によって西洋化の改革を押し進めたため政府側の意向で「正式な場では洋装するように」と衣服令を出したそうです。

庶民が着物を着る場合は、それぞれの家系を示すシンボルである家紋(もん)を入れた「紋付」が礼装と定められました。

現代では西洋化が当たり前となってしまいましたが、西洋化に大きな変化があった時代と言われているのが明治時代です。

この当時、日本政府が西側諸国の文化を積極的に取り入れる活動を行った為、和装から洋装へと切り替わっていくきっかけになったのではないかと考えます。

明治が始まる前の江戸末期に鉄の船が押し寄せたことにより日本は鎖国をやめ開国し、西側諸国の受け入れを開始しました。

日本人は鉄の船を見てすごく驚いたとの事ですが、来航したペリー自身もその当時から

「日本は脅威になる」と感じていたそうです。「機織り」の技術と「木製船の見事な曲線や品質を見て」驚愕したともいわれています。

❷第二次世界大戦後、ポリエステル開発による正絹生地の減少

第二次世界大戦真っ只中の1941年にイギリスから天然繊維であるウールの代替品として開発されました。日本では1957年から帝人と東レが開発国の

イギリス企業から支援を受けポリエステルの工業化が進みました。東レがポリエステル生地の着物を販売してからはおよそ60年経つそうで

ポリエステル生地で作った着物の歴史も実は半世紀以上になります。意外と歴史が長く現在でも着物業界に親しまれています。この簡単に洗える着物

を作る際、作る工程が速くなる分

生産能力もグンと上がり、価格も安価に抑える事ができ、現在に至っては自宅でも洗える着物というキャッチコピーと共にポリエステル着物が徐々に浸透する背景には戦後あらゆる発展による

影響は否めないです。

当時は着物に精通しているおじいちゃんおばあちゃんも多く、「子供や孫には絶対に正絹着物を着させてあげたい」という方も多く存在し、お宮参り、七五三、振袖は百貨店で購入する

といった一大イベントでもありました。特に戦後の日本は高度経済成長という時代でもあり

恵まれた環境下で「大切な家族の為に、伝統儀式をきちんとした着物で行いたい」と思う家庭も多く存在していたのではないでしょうか。

日本も経済発展が進んでいったため、着物業界でも異変が起こり始めます。それは「問屋、メーカーによる過剰生産」や「小売りが売れなくなった商品を平気で返品しそれを受け入れる体制」もあり、在庫過多になったのではないかとも言われています。

経済成長を行う傍ら、ライバル会社とのしのぎを削る戦い合戦による、「商品強化」を行う事によって不良在庫も増加していきました。そうすると、倉庫を借りたりする業者も増えたのではないでしょうか。倉庫代もかなりの賃料になりますから本当に大変だと思います。特に着物は洋服と違い重いし長い商品ですから在庫過多になってしまった業者にとってはかなりの出費です。

私の考えとしては、この在庫が多くなってしまった要因として、正絹に比べて安価に購入できるポリエステル着物も原因だったのではないかと考えます。正絹のいわゆる「染め」や「織」の着物は

職人の手によって作られます。機械化されたポリエステルのように簡単に作る事が出来ません。

もちろん、「絹の着物」の中にも大量に作れる商品も世に出回りましたが、「絹」「染」「織」

等の工程を考えてもポリエステルから作る着物の方が生産効率は早いはずです。

※昔のポリエステル着物のほとんどが型染めだと思います。転写機やインクジェットは2000年

頃から品質が向上したと考えられています。

ただそれでも1980年当時の日本の着物産業全体の売上は(1980年代頃)現在の7倍以上もあったそうです。※2兆円程度あったともいわれています。

1980年代までは着物業界が好景気だった事が伺えます。ただこの競争激化により、後に

この在庫過多が衰退の原因の一部となっていたのではないでしょうか。

バブル崩壊、着物離れ

テレビで再放送される徹子の部屋、出演者の中に昔~現在に至るまでご活躍されている

女優さんの昔の映像を観ていますと(1979年~1986.88年頃の映像)沢山の女優さんたちが

高価な着物を着ながら出演されています。この頃まで着物業界がスポンサーとなっていたのではないかと伺えます。80年代~バブル期までの着物が一

番豪華だったのでは無いかとも言われています。戦後から急成長した日本は敗戦国とは思えないスピードで経済発展を行いました。

経済発展により、庶民も豊かになり、その流れで着物に出費をする女性も多く、業界全体で

過去最高の売上だったのが1980年代頃。

ただこの好景気で力をつけた日本にとって都合の悪いことが起きてしまいます。ニューヨークのプラザホテルでアメリカと締結したドル高是正製政策

「プラザ合意」1986年バブル崩壊の発端は、「プラザ合意」が原因とも言われています。

1980年代当時、アメリカは深刻なドル高に悩んでおり1985年9月22日、ニューヨークのプラザホテルに先進国5カ国(日・米・英・独・仏=G5)の

財務のトップ(日本は大蔵大臣、米国は財務長官)と中央銀行総裁が集まり会議が開催されました。

日本はこのプラザホテルでドル高是正を目的とした「プラザ合意」という締結結びました。プラザ合意前日のドルは1ドル=242円、翌年には一時1ド

ル=150円台まで下落するなど合意の流れによって円高ドル安となりました。それまでの日本は製造大国でしたが、日本の円安になる事によって輸

出力が弱体化していきました。深刻な打撃を受け、町工場等、製造関連会社が倒産していきました。1989年の世界企業時価総額ランキングを見ても分

かる通り、日本の企業は

TOP10入りに、7社(1位~5位まで)が日本企業。TOP50社内になんと32社も入っていました。

このバブル崩壊と共に着物業界も衰退の一途を辿っていきます。

追記

この、バブル期に着物販売業者が押し売りをし、ローンを組ませて購入させるような悪徳業者も沢山いたそうで、こういった悪徳業者から押し売りを受けた人たちは破産に追い込まれてしまいました。

バブル崩壊と悪徳業者のローン販売により「着物離れ」が増えていったのではないでしょうか。

着物のイメージがより悪くなってしまいました。バブル崩壊を機に沢山の「機織り」「染め屋」「手描き作家さん」などが店じまいをし、着物産業は急激なスピードで縮小していきます。

❹コロナショック前と後

そんな中、京都のとある店舗が街着を観光客相手に着付け、ヘアセット込といった新業態「着物レンタル」のお店が流行し日本に来た外国人観光客の

で人気となりました。

当店も「街歩き着物レンタル」ですが、本年度から七五三や祝着にも力を入れていきますので

宜しくお願い申し上げます。

さて、本題へと戻りますが2013年以降から徐々に外国人観光客が増え始め「街歩き着物業界」に

参入する企業がどんどん増え始めてきました。※2013年に始めて年間1000万人の外国人観光客が来日しました。

外国人が利用する事によって日本人にも「着物レンタル」が認知され、外国人以外の日本人の利用者数も増えました。特に、安部元総理の経済政策も後押しをしたのでは無いでしょうか?

景気も徐々に良くなり、着物を着てみたいといった日本の方々も増え始め、当店「鎌倉きもの小町」

にも多くのお客様がご来店下さいました。

2016年からオープンした当店は本年度で8年目を迎えます。

オープン当初から2019年頃までは年々お客様も増加し、にぎわっていましたが

2020年2月頃から一気に来客数が激減致します。皆さんご存じの通りこの頃、コロナウイルスが

世界中に広がり、人々を震撼させました。学校はリモートとなり、飲食店は営業できず、

観光関連企業も軒並み休業と窮地に追い込まれてしまいます。医療もひっ追し、医療従事者の方々も疲弊し、世の中が失われたような感覚でした。

2023年頃から徐々に通常営業を開始する会社も増えてきましたが、00融資が終わると同時に返済に追い込まれた中小企業は倒産してしまいました。

着物業界も、「染め屋」「縫製屋」など沢山の関連企業が倒産してしまい、通常営業開始した現在でも、着物に関する商材が集まりにくいのが現状で

す。倒産により、着物市場が回らず、納期に6ヶ月~1年位かかってしまいます。

メーカーも昔の経験を活かし、在庫を持たない方法で着物を生産しています。

それと併せて、製造工場や生産者の倒産や減少によって着物業界はより一層厳しくなりました。

コロナは明けたが倒産企業が多く、商品が作れなくなってしまったのです。もちろん他の企業や業種も同じ状況ですが、衰退した産業がこの3年間で

一気に失われてしまいました。皆さんのお力でまた着物業界、日本の文化を残して行けますよう、願っています。

最後に

現状、若い職人さんで藍染を広めている方もいらっしゃいます。本来、ポリエステルではなく自然由来の「絹」や「ウール」は身体にも良いとされています。

下履きも、スニーカーより竹やワラで出来た履物、木で出来た下駄を履く事によって脳を刺激し、体幹も強くなると言われています。足には沢山の毛細血管が流れており、

それを刺激する事によって脳にも刺激を与えるとも言われています。

現代人は、どのくらい「便利にしよう」や「楽にしたい」ばかり考え、人間本来の本質を忘れてしまいがちですが、今迄伝わってきた文化や風習は簡単に無くしてはいけません。

日本の皆さんで、日本の文化を守っていける、それを皆で来世に繋げる。

そんな世の中になって欲しいと願っております。

私を含め、皆様で良い日本であり続けられるよう頑張っていきましょう!!

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